なぜ硫黄なのか?

~ 硫黄は地球規模で一方向に循環している ~

 

炭素循環・窒素循環があるように、硫黄にも循環が有ります。

微生物や植物は硫黄同化代謝により、無機性硫黄化合物(硫化水素イオン、チオ硫酸イオン、硫酸イオンなど)から有機性硫黄化合物(システイン、メチオニンなど)を合成できます。一方、ヒトを含む動物はこの硫黄同化代謝を持たず有機性硫黄化合物を合成することができません。したがて、私たちは食事を通して有機性硫黄化合物を摂取しなければならず、微生物と植物に依存していることになります。

硫黄化合物を網羅的に分析することにで、ヒト(医療)から農水産物(食品)、微生物(土壌)にいたるまで、どのような環境で育ったのか、生活習慣・成育環境を紐解くことが出来る可能性があります。



 

~ 硫黄は様々な酸化還元状態を取る ~

 

生体内の「酸化」・「還元」は、酸素だけではなく、硫黄も深くかかわっており、酸化ストレスの影響から、硫黄の変動が確認できます。

サルファーインデックスは約70種類の硫黄化合物を登録しますが、中でも色々なポリスルフィド化合物を登録している点に特徴があります。例えば、グルタチオ、グルタチオンジスルフィド、グルタチオントリスルフィド、グルタチオンテトラスルフィドとグルタチオンのSH基に「硫黄」が数珠繋ぎとなったジスルフィド結合状態を検出できます。これは硫黄から酸化の状態が確認できるので、酸化マーカーの新たな指標として適用できる可能性を示しています。生体内で炎症が起きている箇所、中でもラジカルによる酸化ストレスが生じている箇所でポリスルフィド化が起こると想定すると、そのような原因の疾患はすべて早期に診断できる可能性がある。

 

 

~ 硫黄の特徴である「臭い」に関わる分子種 ~

 

硫黄のもう一つの特徴である「臭い」に関わる分子種(オフフレーバーなど)もサルファーインデックス解析の検出対象です。これでサルファーインデックス解析を行えば酸化ストレス・硫黄臭・含硫化合物量(微生物の働き)の新しい指標が広い分野で利用できます。

 

 

~ 硫黄で代謝全体を俯瞰できる ~

 

硫黄代謝系は解循系、TCAサイクルから成る中枢代謝系と寄り添う形で存在しています。解循系、TCAサイクルはそれぞれ核酸代謝系、アミノ酸代謝系へとつながっており、生物が生存するために相互にバランスをとっています。

サルファーインデックスは硫黄のみ解析して終わりではありません。硫黄代謝を把握することで、窒素・炭素代謝の状況を考察し、次のステップとして、中枢代謝系、核酸代謝系などに焦点を絞ったフォーカスドメタボローム解析にて検証をし、最終的な答えを導きだす2ステップを推奨しています。




 

 

~ 硫黄は様々なタンパク質を修飾する ~

 

タンパク質のシステインオチール基は、その三次元構造の形成など機能性を発揮する上で、非常に重要な官能基です。そのシステインオチール基は、活性酸素や一酸化窒素により化学修飾され、スルフェン酸、ニトロシル、ジスルフィドの状態になりその機能性が変化します。硫黄はそれら化学修飾された部分をスルフヒドリル化することにより、その活性を高めることもあれば、制御することもあります。

そんなスルフヒドリル化に必要な硫黄は、様々な経路で有機・無機性硫黄化合物(システインモノスルフィド・チオ硫酸イオンなど)から供給されます。サルファーインデックスは、スルフヒドリル化に関与する有機・無機性硫黄化合物を網羅的に解析することが可能であり、生命現象に対するスルフヒドリル化の関与を推察する上で有用です。