なぜ硫黄なのか?

~ 硫黄は地球規模で一方向に循環している ~

 

炭素循環・窒素循環があるように、硫黄にも循環が有ります。

微生物や植物は硫黄同化代謝により、無機性硫黄化合物(硫化水素イオン(HS-)、亜硫酸イオン(HSO3-)、チオ硫酸イオン(HSSO3-)など)から有機性硫黄化合物(メチオニン、システインなど)を合成できます。一方、ヒトを含む動物はこの硫黄同化代謝を持たず有機性硫黄化合物を合成することができません。したがて、私たちは食事を通して摂取しなければならず、完全に微生物と植物に依存していることになります。硫黄が全生物で必須な化合物である所以です。

つまり、硫黄化合物を網羅的に分析することにで、ヒト(医療)から農水産物(食品)、微生物(土壌)にいたるまで、どのような環境で育ったのか、生活習慣・成育環境を紐解くことが出来る可能性があります。




 

~ 硫黄で代謝全体を俯瞰できる ~

 

硫黄代謝系は解循系、TCAサイクルから成る中枢代謝系と寄り添う形で存在しています。解循系、TCAサイクルはそれぞれ核酸代謝系、アミノ酸代謝系へとつながっており、生物が生存するために相互にバランスをとっています。

サルファーインデックスは硫黄のみ解析して終わりではありません。硫黄代謝を把握することで、窒素・炭素代謝の状況を考察し、次のステップとして、中枢代謝系、核酸代謝系などに焦点を絞ったフォーカスドメタボローム解析にて検証をし、最終的な答えを導きだす2ステップを推奨しています。

サルファーインデックス®(ユーグレナ社の商標です;第5965744号(2016))は、分析すべき化合物数が少なく、多変量解析(多次元尺度法、主成分分析等)で考察が比較的容易な事が利点です。一般的なメタボローム解析での多変量解析では区別ができたとしてもその原因を特定することは困難な場合が多いです。しかし、硫黄に着目することで、多くのサンプルが、第1軸に「酸化還元度(鮮度)」に関与する因子、第2軸に「抗酸化能(微生物の働き)」に関与する化合物の含有量で、多くの場合特徴づけられることが分かってきております。より直観的に理解できる解析結果が得られることが多く、今までになかった新しい代謝機能に注目した分析サービスを展開することが可能となりました(特許6426329号(2018); Kawno et al., J. Biosci. Bioeng., (2015); Yamada et al., Scientific Reports, (2019); Tanaka et al., Scientific Reports, (2019); Nakajima et al., Plant Cell Physiol., (2019); Kawno et al., AMB Express, (2019); Matsuda et al., Transl Psychiatry (2020))。




 

~ 硫黄は様々なタンパク質を修飾する ~

 

タンパク質のシステインオチール基は、その三次元構造の形成など機能性を発揮する上で、非常に重要な官能基です。そのシステインオチール基は、活性酸素や一酸化窒素により化学修飾され、スルフェン酸、ニトロシル、ジスルフィドの状態になりその機能性が変化します。硫黄はそれら化学修飾された部分をスルフヒドリル化することにより、その活性を高めることもあれば、制御することもあります。

そんなスルフヒドリル化に必要な硫黄は、様々な経路で有機・無機性硫黄化合物(システインモノスルフィド・チオ硫酸イオンなど)から供給されます。サルファーインデックスは、スルフヒドリル化に関与する有機・無機性硫黄化合物を網羅的に解析することが可能であり、生命現象に対するスルフヒドリル化の関与を推察する上で有用です。